Marshallアンプでクリーン・トーンを出すコツ

Marshallアンプを使って、Roland JC-120のようなクリーン・トーンを出そうと思っても、それはほぼ不可能です。

そもそもJC-120はトランジスタ・アンプで、Marshallは真空管アンプなので、根本的に出音の傾向が異なるので当然なのです。

ですが、ギタリストには「MarshallでJC-120のようなクリーン・トーンを出したい」と思う方もいると思います。

もしそれが叶うのであれば、利便性がかなり向上するのですが…。

今回は、Marshallアンプでクリーン・トーンを出すコツについて考えていきましょう。

Marshallアンプのクリーン・トーンについて

まず、第一に、Marshallアンプから出るクリーン・トーンは、「Marshallのクリーン・トーン」が出ます。

当たり前のことかもしれませんが、音の印象としては、少し濁ったようなクリーン・トーンになっています。

一昔前の、名機と言われたMarshall 1959のような、マスター・ボリュームがなく1チャンネルしかないアンプだと、ボリュームを上げるに連れて歪んでいくので、純粋なクリーン・トーンを出すには、音量を絞らなければなりませんでした。

余談ですが、The WhoのPete Townshentは、Marshallでのサウンドメイクに熱心で、上記の特性を活かしたギター・サウンドを多く残しています。

近年のMarshallアンプ、JCM2000の謳い文句は、Marshallでも綺麗なクリーン・トーンが出せるという点です。

確かにJCM2000にはクリーン・チャンネルが装備されているのですが、バンド・サウンドの中でこのチャンネルを使ったクリーン・サウンドを出すと、いわゆる「抜けの良い音」になりません。

一人で弾く場合にはクリーンを実感できるのですが、特に低音が出るドラムやベースの音にかき消されてしまい、ギターの音が聴こえなくなってしまいます。

そこで音抜けを良くしようと高音域を効かせても、キンキンでサステインのない音になり、狙ったような音にはおそらくならないと思います。

最も有効な方法は、クランチ状態にしてギター側のボリュームでアンプの歪み具合をコントロールする(前述のPete Townshentの方法)と、バンド内でも抜ける気持ちの良いクリーン・サウンドが出すことが出来ます。

ブースト・ペダルなどの使用

Jimi Hendrixは、MarshallにFuzzfaceを接続していましたが、Pete Townshent同様、ギター側のボリュームを絞ることにより、クリーン・サウンドを得る奏法を使っていました。

そもそも、Jimi HendrixにMarshallの使用を薦めたのはPete Townshentだったそうです。

Fuzz Boxは、ギターのボリュームに敏感に反応します。

現代では、クランチ状態のアンプに対して、クリーン・ブースターやオーバードライブでブーストしておき(ゲインは0の状態にしておきます)、ギター側のボリュームを絞ることで、抜けの良いクリーン・サウンドを作るという方法が主流のようです。

オーバードライブを使ってブーストさせる場合は、ギター側のボリュームに敏感に反応してくれる機種を選ぶと良いでしょう。

検索する時は「トランスペアレント系オーバードライブ」と入力すると、いくつか種類が紹介されていますので、試してみてください。

上記の種類のエフェクターは、エフェクターで積極的にクリーンを目指して音を変えていくというより、アンプの特徴を活かしながら歪みを足す、といったイメージとなります。

クランチ・チャンネルでブースト・ペダルなどを使い、ギター側のボリュームを絞って作るクリーン・サウンドは、クリーン・チャンネルのみのサウンドより太くなります。

クリーン・サウンドとドライブ・サウンドを使い分ける人で、その音圧差が気になる場合は、この太いクリーン・サウンドは使えるのではないでしょうか。

手元の操作が必要なので、素早い切り替えができない(練習すれば大分スムーズになります)のはデメリットとなりますが、スイッチング・ノイズや切り替えの際の音切れがないのもメリットです。

Presence

ほとんどのMarshallアンプには、Presenceを調節するツマミが付いています。

そもそも、Marshallアンプは、Fender Bassmanのコピーからスタートしたアンプですので、回路の原理的には、負帰還を利用したアクティブ・トーン回路と同様です。

このPresenceは、超高音域を調節する、音の存在感を決める役割があります。

通常のアンプでは、Treble、Middle、Bassの3バンド・イコライザーがプリアンプに効き、ここで基礎的な音質の補正が行われます。

それに対して、Presenceはパワーアンプ部に効きます。

つまり、プリアンプ部で音が作られた後の、音の増幅の際にPresenceが有効になる、ということです。

サウンドメイクの仕上げとして、全体的に音の抜けが悪いと感じたら、少しだけ上げると抜けが良くなります。

綺麗なクリーンは出ない

ここまで書いてきたように、クランチ・チャンネルにセッティングし、ギターのボリュームを下げる事で存在感のあるクリーンな音を出す、というのが、Marshallアンプでのクリーン・トーンの出し方になります。

やはり、冒頭でも説明したとおり、JC-120に代表されるような、瑞々しく綺麗に澄んだクリーン・トーンを出す事は難しいです。

そもそも、そのような音を出せる作りになっていない、と考えるべきでしょう。

しかし、単体で弾くとやや綺麗ではないクリーントーンも、バンドで弾くと意外にすっきりとまとまって聴こえる物です。

個人的にはJC-120でチューブアンプのような歪みが出せないように、Marshallで美しいクリーンを出そうとするのは無理があると考えています。

もっときらめくようなクリーンを出したい場合はA/Bboxなどを使って、クランチやドライブ・サウンドはMarshallで、クリーン・トーンの場合はJC-120に切り替える等、2台を使い分ける方法が良いでしょう。

それ以外の方法では、アンプ・シミュレータ機能が付いたマルチ・エフェクターをJC-120のリターンに繋ぎ、音作りはマルチで行う方法、あるいは同じくJC-120を使用して、クリーンにセッティングしオーバードライブやディストーションで歪みを作る方法が考えられると思います。

プリアンプをMarshallアンプのリターンに繋ぐという方法もありますが、クリーンが綺麗に出せるプリアンプを色々と試してみる必要があります。

結論を言ってしまうと、Marshallアンプを単体で使った時に、ドライブ・サウンドと綺麗なクリーン・トーンの使い分けは大変難しいと思いますし、何よりMarshallは、そのような目的のアンプではないと言えます。

スタジオやライブハウスのアンプを使う場合は、クリーンと歪みどちらが重要か、根本的にどのアンプが自分のスタイルに合っているかを考慮することが大事です。

クリーンと歪みを上手に使い分けるには、クリーンが綺麗に出るアンプを用意するのが早いかもしれません。

個人的に好きなのは、Diezel Herbertです。

このアンプは、非常に綺麗なクリーンが出ます。

Marshallと比べると価格も大分高く、余り楽器屋やスタジオにも置いていませんが、試奏の機会があればぜひ試してみてください。

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