ジャズ・ギターのオススメのセッティングについて。

ジャズ・ギターの太くて丸みがあり、繊細なフレーズを重ねていく音は、とても美しいですね。

ただ、一概にジャズ・ギターと言っても、今書いたような音だけではもちろんなく、ジャズのジャンルや個々のギタリストによってかなり違いがあります。

しかし、よく考えてみると不思議なのですが、個々に異なると言っても、誰もが聴いたらジャズ・ギターだ、と感じる音があります。

今回はそんな、いわゆる「ジャズ・ギター」っぽい音作り、セッティングについて書いていきます。

ジャズに興味がないギタリストでも、他に参考になるかもしれませんので、ぜひ一読くださいね。

ジャズ・ギターのオススメのセッティングについて。

いわゆるジャズ・ギターっぽい音を出すギタリスト

上記のとおり、「いわゆるジャズ・ギターっぽい音」と言っても、ジャズ自体に長い歴史があって、その時代やジャンルでも異なりますし、ましてギタリスト個人、そしてリスナーの感じ方によっても違います。

ここでは、一般の人や音楽に詳しくない人が、パッと聴いて「ジャズのギターの音だ」と分かるもの、としたいと思います。

もちろんフレーズやバッキングによっても変わってきますが、主に音色で考えてみると、1950年代のジャズ黄金期のサウンドでしょうか。

Wes Montgomery、George Benson、Joe Pass、Tal Fallowあたりの、それもギターのみを聴いただけでも、ジャズだ、と思えるでしょう。

一般の人は、ピアノやホーンがリードを取っている楽曲を聴いた方が、ジャズをイメージしやすいのかもしれません。

60年代以降のフリー・ジャズやクロスオーバー、現代のEDMと融合したようなジャズでは、ギターを聴いても「いわゆるジャズ・ギターっぽい音」とは言えないでしょう。

ギター

今挙げたようなギタリストたちがメインとして使っていたギターは、基本的にアーチトップでフル・アコースティック、もしくはセミ・アコースティックです。

もちろんフルアコでなくても、サウンドメイクやフレーズの選択によっては、ジャズっぽさを出せないこともありません。

ですが、フルアコを使った方が本来のジャズ・ギターの音に近づけるのは確かですし、見た目にもイメージされやすいと思います。

安い機種でも良いのですが、ギターに使われている材や電気系統の状態によって差がついてきます。

セミアコはフルアコよりも、ややソリッドでトレブリーな音です。

この辺りは楽曲によって使い分けると、バリエーションが出せますね。

ジャズ・ギターの基本は、フロント・ピックアップで、トレブルを絞った設定にします。

そしてピックよりも指弾きの方が雰囲気が出せるでしょう。

ただし、上記に挙げたようなギタリストは、指弾きでもそうとは思えないようなテクニックを披露していますので、ピックを使わない場合には、相当な練習が必要だと思います。

弦は、ロック系で良く使われているラウンドワウンド弦ではなく、フラットワウンド弦が適しています。

一般的に、ラウンドワウンド弦はブライトな響きで、フラットワウンド弦がマイルド、そしてハーフワウンド弦は、ラウンドワウンド弦とフラットワウンド弦の中間と言われます。

ジャズ・ギターでは、リード・プレイでも演奏に溶けていくような音色がマッチしますので、ラウンドワウンド弦が望ましいでしょう。

太さについてですが、ジャズ・ギタリストはベンディングをほとんど用いませんので、なるべく太いものを選んでください。

ベンディング独特のアタックやピッチ・コントロールは、ブルースの方が向いています。

余談ですが、先ほど挙げたJoe Passは、リード・プレイで勢い余ってそれらしい指の動きはあったかもしれないが、ベンディングは生涯で一度も使ったことがないと、インタビューで答えていました。

3弦も巻弦の方がより近いサウンドになりますが、3弦の使用頻度にもよりますし、ロック系であれば普段はプレーン弦を使っていると思いますので、こだわり過ぎなくても良いです。

アンプ

・ボリューム

アンプは、複雑に倍音が絡み、太くて温かみのある音が作れる真空管搭載のものが理想です。

もちろん、Roland JC-120のようなトランジスタ・アンプでも、全く近い音が出せないわけではありません(そもそもJCは、「Jazz Chorus」の略で、ジャズ・ギター向けに作られたようです。)。

サウンド・メイクについてですが、ボリュームをフルテンにして全力でコード・ストロークをした際に、若干歪んだかな、と感じる程度にしておくのが良いでしょう。

ジャズ・ギターでは基本的に、リード・プレイとバッキングの音量の調節については、ギター側のボリューム・トーンで行うので、このセッティングであれば、バッキングはクリーンにしてボリュームを上げていくと太くなります。

・バンド・イコライザー

次にバンド・イコライザーに関してですが、注意する点がいくつかあります。

ジャズ・ギターの音のイメージが、太くて甘いせいもあってか、低音を上げ過ぎてしまうことに気をつけてください。

低音を上げ過ぎてしまうと、他のパート楽器とぶつかって、掻き消してしまうケースがけっこうあります。

特にベースやキックの音域は要注意です。

バンド・サウンドの厚みがなくなってしまいますので、総合的に判断してください。

ジャズ・ギターで聴かれる、太くてメロウな、そしてアンサンブルに埋もれないトーンは、ギター側のトーン・ノブを絞ることでコントロールします。

この辺りは、ギターの個性やギタリストの感性によるところが大きいので、色々と研究が必要でしょう。

エフェクター

1950年代に活躍したギタリストたちは、もちろんストンプ・タイプのエフェクターはなかったため、ギターとアンプ、演奏する場所のナチュラル・リバーブ、ということになります。

現代ではエフェクターが手軽かつ豊富に扱えるので、アンプ内蔵タイプのリバーブを使っても良いですし、アナログ・タイプのリバーブかディレイを用意しておけば良いでしょう。

他にはギターの音質を補正する目的で、コンプレッサーやイコライザーがあると重宝します。

ブースターやオーバードライブも良いですが、クセがあると、音量・音質のコントロールが難しくなるかもしれません。

最後に

ここまで記載してきた内容を参考にしていただければ、ジャズ・ギターっぽいサウンドを作れると思います。

より精度の高いサウンドを作りたい場合は、多くのジャズを聴く、ギタリストのプレイを参考にする、など勉強を重ねてみましょう。

それらを自分のプレイに取り込んで、自分のギター・サウンドを目指してください。

ジャズ・ギターの初心者の練習方法や練習曲について。

ここまで、ジャズ・ギターの音作りについて書いてみました。

ここからは、音楽的な側面や、テクニカルな面から、ジャズ・ギターを考えてみたいと思います。

しかし、どのようなコード進行を使ったら良いのか、どのような練習が効果的なのか、分からないことも多いと思います。

ジャズは理論的にも、技術的にも、難しい音楽というイメージがありますしね。

今回は、初心者のためのジャズ・ギターの練習方法についてです。

テンション・コードを押さえられるようにする

まず初めに、ジャズで頻出のコードについて紹介します。

ジャズでは、「テンション・コード」がよく使われます。逆に言えばテンション・コードを使うことで、ジャズっぽい雰囲気を出すことが出来るわけです。

それでは、テンション・コードについて、なるべく簡単に解説していきましょう。

通常の三和音や四和音コードに対して、テンション・ノートを加えたコードです。

通常のコードは、ルート音とコード・トーン(3rd、5th)で構成されていますが、これらにオクターヴ離れた音を加えることで、緊張感(テンション)のある響きが得られます。

Cメジャー・コードを例に解説します。

  • 9th → 2nd(D音)を1オクターヴ上げる
  • 11th → 4th(F音)を1オクターヴ上げる
  • 13th → 6th(A音)を1オクターヴ上げる

以上が一般的なテンション・ノートで、これらをベーシックなコードに加えるだけで、ガラリと雰囲気を変えることができます。

上記の音を半音上げ(#)、半音下げ(♭)することで、オルタード・テンションとして拡張します。

ところで、多くのテンション・コードは、ギターでヴォイシングすることがほぼ不可能もしくはかなり困難です。

その理由は、押弦するポジションが4つ以上あること、また、ギターという楽器の構造上、テンション・ノートの位置が、通常よりも非常に離れた位置にある(簡単にいうと指が届かない)ためです。

そこで、ヴォイシングの変更が必要になってきます。

例えば、ルート音はベースに任せて弾かない、5thもしくは7thは弾かないなどの工夫してみましょう。

逆にその方がアンサンブルとしてスッキリしたり、より音楽的に聴こえてきます。

3rdすら省略してしまうと、メジャー/マイナーどちらでも使えるヴォイシングになりますし、調性を感じさせない響きになります。

このためには、コードをフォームで覚えるこではなく、音名でしっかり記憶する必要が出てきます。

運指も通常のパターンより難しくなりますので、練習曲を挙げてみます。

練習曲

楽曲練習用に、ジャズのスタンダード曲のコード進行を集めたスコアブックやサイトなどを参照してください。

それを使って、ジャズ・ブルースの典型的なコード進行のパターンを覚えて、バッキングを弾けるようにしてみましょう。

ブルースのコード進行を知っている方であれば、ブルース進行を発展させたもの、と理解してください。

それでは、まずはCharlie Parkerなどで聴かれるスタンダード・ナンバー「Now’s The Time」です。

|F7  |B♭7 |F7  |F7  |

|B♭7 |B♭7 |F7  |A7 D7|

|G7  |C7  |F7  |F7  |

続いて、こちらもスタンダードでよく知られた楽曲「Billie’s Bounce」のコード進行です。

こちらは「Now’s The Time」の一部が複雑化しています。

|F7  |B♭7 |F7  |F7  |

|B♭7 |B♭7 |F7  |A7 D7|

|G7  |C7  |F D7|G7 C7|

また、ジャズ・ブルース進行以外での有名なジャズ・ナンバーを紹介します。

「Autumn Leaves」Tal Fallowの奏でるジャズ・ギターのメロディが、耳に残る楽曲です。

この楽曲のコード進行は、以下の2パターンしかありません。

この進行は、丸暗記してしまいましょう。

  1. |C7 |F7 |Bb△7|Eb△7|
  2. |A7b5|D7 |G7 |G7 |

まずは、この3つの楽曲とコード進行を覚えて、コード・チェンジもスムーズに行えるようになったら、徐々にスタンダード・ナンバーのレパートリーを増やしていきましょう。

4ビートのリズムを覚える

コード・ヴォイシング以上に重要なのは、ジャズ特有のリズムである4ビートを弾けるようにすることです。

ジャズに限らずですが、音楽にとって最も重要な要素は、リズムです。

リズムがその楽曲のイメージ、ジャンルなどを決めてしまっていると言っても過言ではありません。

基本的なリズム練習になりますが、最初は拍のアタマをしっかり合わせることから始めましょう。

リズムは、ギタリストの個性が出ますので、好きなギタリストを見つけたら、コード面だけでなく、リズム感も大いに参考にしてください。